予防について

大腸がんの予防

 大腸がんを予防する方法はいろいろ研究されていますが、完全に予防する方法はありません。 しかしなりにくくする方法はあります。 まず、大腸がんが発生する危険性を下げる因子として挙げられているものをお話しします。

 一番信頼性が高い因子としては、適度な運動と肥満の予防です。 身体活動の活発なひとは、まったく運動しないひとの半分程度しか大腸がんにならないという研究結果もあります。 屋外の運動により、適度に日にあたり、ビタミンDが多く体内で合成されることも有利に働くと考えられます。 適正体重で内臓脂肪の少ないひとは、そうでないひとの3分の1しか大腸がんになりません。

 食事に関しては、緑黄色野菜や魚を中心に食物繊維、カルシウム、そしてビタミンDの多い食事をして適度に日に当たることが、大腸がん予防に有効とされています。 野菜を十分食べているひとは、全く食べないひとの半分しか大腸がんになりません。 食物繊維そのものだけでは、大腸がんの予防にならないこともわかっており、サプリメントに頼らず食事の中から食物繊維をとることが重要です。

 そして逆に運動不足、野菜の不足、動物性脂肪、赤身肉や加工肉の取りすぎ、たばこやアルコールの飲みすぎ、そして肥満が、大腸がんの危険因子として挙げられます。 アルコールの弱いひとは、特に飲まないようにすることが大切です。 飲めるひともほどほどにしましょう。 これらの危険因子は生活習慣を整えることで減らすことが可能ですし、高血圧、糖尿病、脂質異常症などのいわゆる生活習慣病の予防にもつながります

大腸がんの予防に良い食べ物

 食事は、野菜と魚をしっかり食べることが大切です。 食物繊維の多い食品、にんにく、牛乳、ヨーグルト、カルシウムの多い食事が、大腸がんのリスクを下げることがほぼ確実とされています。 野菜を小鉢で5皿、果物1皿、牛乳コップ1杯またはヨーグルト1個くらいは毎日とりましょう。

食物繊維の多いもの:インゲン豆、あずき、おから、しそ、よもぎ、エンドウ豆、パセリ、
          納豆、ごぼう、ゆりね、にんにく、アボガド他

カルシウムの多いもの:サクラエビ、しらす干し、チーズ、いわし、ししゃも、油揚げ、
          パセリ、かぶの葉、がんもどき、モロヘイヤ、サバの水煮缶、
          バジル、しそ、大根の葉

ビタミンDの多いもの:アンコウのきも、しらす、いわし、にしん、さけ、さんま、うなぎ、
          ひらめ、まぐろ、かれい、きくらげ、煮干し、干ししいたけ

運動は大腸がんの予防に一番

 毎日1時間程度歩くことと、週に1度は汗が少し出るくらいの運動をしましょう。 いろいろな研究がありますが、座って仕事をしている人より、体を使う仕事をしている人の方が、大腸がんの発生は少ないという事実があります。 肥満と大腸がんの関係もありますので、運動で、標準体重を維持するようにしましょう。 また、適度な運動は、免疫力をあげることもわかっています。 免疫力が高まるとがんの発生も予防できます。

がんの芽は早めに摘むことも大切(二次予防)

 がんは、細胞の中にある遺伝子の異常が蓄積して発生し、さらに遺伝子の異常が積み重なることで進展、進行してくるとされています。 たとえば、大腸の粘膜細胞のAPC遺伝子に障害がおこると大腸の腺腫性ポリープが発生します。 腺腫性ポリープになると細胞分裂が盛んになるので遺伝子異常が引き続き起こる頻度が高くなります。 K-ras遺伝子に異常が起こることで腺腫性ポリープは更に大きくなります。そしてp53遺伝子に異常が起こると大腸がんが発生します。 大腸がんになった後も遺伝子の異常が積み重なり、がんは浸潤や転移を起こしてきます。 転移がひどくなれば生命を脅かしてくるわけです。

 ですから大腸がんになる前の腺腫性ポリープの段階で治療することによって大腸がんが予防できるはずです。 最近、米国の研究グループは、腺腫性ポリープ切除を受けた2602人を23年間経過観察したところ、通常の大腸がんの死亡率の半分以下になったと報告しています。 腺腫性ポリープを切除しても大腸がんの死亡率が0にならないのは、腺腫性ポリープを経由しないで発生する大腸がんもあるからと考えられます。 しかし、がんになっていても早期にみつかれば根治するがんでもあります。 粘膜内にがんがとどまっていれば、転移は全くといってないので、その部分だけを切除すれば完治します。もちろん抗がん剤や放射線治療も必要ありません。

 大腸内視鏡検査の技術も年々進んでおり、大きくなっても粘膜内にがんがとどまっていれば、ほとんどが内視鏡治療で切除できるようになりました。 今までは、大きさが2cmまでの病変が安全に取れる限界でしたが、2012年より内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)という方法が保険適応になり、2cm以上の大きな病変も内視鏡切除で切除することが可能になりました。 また、大きな腺腫性ポリープは、その中にがんを合併することが多いので内視鏡で切除しておくことが大切です。